空耳


二人を隔てる線路の向こうから

それでも貴方は叫んで手を振る

涙が溢れてしまったのは

息も凍るような寒さなのに

胸の辺りだけ 突然あたたかくなって 驚いたから

 

氷山よりとんがってたプライドも ポリシーも

忙しさで溶けていくけど

ひとつだけ ただひとつだけ

固めなおしてくれるのは あの日の貴方の言葉

 

ああ 雑多に揉まれながら 毎日に潰されながら

それでも生きていく中で

心が青くなった時だけ 掠れながらも聞こえる

都合のいい 私だけの空耳

 

「幼くたっていいよ、本心なんだろう?」

笑って貴方は私を励ましてる

つられて笑ってしまったのは

おととい電話したばかりなのに

受話器ごしに語ったことと 考えが全然違ったから

 

でもちゃんと伝わったよ

いつでもどこでも

ひとりだけ ただひとりだけ

あなただけは最後まで味方でいてくれるんだって

 

きっと カッコ悪くても みっともなくても

足掻くことに意味があるんで

都合の良い結果だけ 拾い上げることは避ける

理解し難い 二人だけのポリシー

 

あの空より青い私を 届かぬ所から見守っていてくれるよね?

良くも悪くも幼い私を 私の中から見ていてね

 

ちょっと複雑な 私だけの気持ち


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